マウスピースの凹みが吹奏感を悪くする?見逃せないポイントを解説。管楽器リペアマンというお仕事

■ 金管楽器って、どんな形をしているか知ってますか?
金管楽器って、ただの筒じゃないんです。
実は「緻密に計算されたテーパー(=円錐のように広がっていく形)」でできています。

このテーパーが少しでも狂うと、音の立ち上がり、響き、ピッチ…すべてに影響してきます。
言い換えれば、楽器の“性格”を決めているのがこの内径のカーブなんです。
■ 詰まりがダメなのは「空気が通らない」からじゃない?
「よごれが詰まると音が悪くなる」とよく言われます。
もちろんそれもあります。でも実はもっと根本的に問題なのは、
その“詰まり”が楽器本来の内径形状を壊してしまうからなんです。
特に金管楽器は、息を入れて振動させる仕組み。
この振動が楽器内部でどんなふうに伝わるかは、
わずかなテーパーの違いで大きく変わるんです。
■ 一番細い場所、どこか知ってますか?
金管楽器の中で、内径が一番細い場所。
どこだと思いますか?
答えは──マウスピースのスロートと言われる部分なんです。
そしてその次に細いのがマウスピースのシャンクです。
そう、「楽器本体じゃない」んです。

この記事をご覧のみなさまはマウスピース、凹んでいませんか?
このマウスピースがほんの少しでも凹むと、振動の流れが変わってしまう。
シャンクが少し潰れていたり、丸くなくなっていたりすると、
楽器とマウスピースのつながりが不均等になって、空気や音の流れに“よどみ”が出ます。

■ 凹んだマウスピース、なぜ見逃されやすい?
マウスピースは小さいし、金属でできていて丈夫そうに見えます。
でも、落としたり、ケースの中でぶつかったりして、思いがけず凹んでいることがあるんです。
シャンク(差し込み口)の端が少し潰れている
→ まっすぐ刺さらない、抜けにくくなる、音の抜けが悪い
「それでも吹けてるから大丈夫」と思ってしまいがちですが、
“吹けてる”と“正しく鳴ってる”は別問題です。
■ 「音が悪くなった」→楽器じゃなくマウスピースが原因かも?
楽器本体に異常が見当たらないのに、
- 吹奏感が重たい
- 音が広がらない
- 疲れやすい
- 音程が安定しない
…こんな違和感を感じたら、まずマウスピースをチェックしてみてください。
一見“吹けてる”ように思えても、マウスピースのわずかな凹みがその原因かもしれません。
■ マウスピースは「小さな楽器」
マウスピースって、ただの金属の塊じゃないんです。
それ自体がひとつの“楽器”ともいえる、精密な音響部品。
だからこそ、
- 凹みや変形がある
- 内径が歪んでいる
- シャンクが真円じゃない
このような状態のマウスピースを使い続けるのは、
狂った口笛を必死に吹いてるようなものなんです。
■ まとめ:見た目以上に、マウスピースは繊細です
「マウスピースが凹んでたら、だめ」
この一言の裏には、金管楽器が持つ極端なまでの音響精度があるのです。
ほんの1ミリの凹みが、音色・息の流れ・演奏感すべてを変えてしまう。
だからこそ、マウスピースにも定期的な点検とケアが必要です。
もし「あれ、最近なんか変だな?」と思ったら、
ぜひ一度、マウスピースのかたちを見直してみてください。
もし凹んでいるようでしたらすぐ直るのでお近くの楽器店へGOです!

この記事の著者
管楽器リペアマン
服部 悟
服部 悟
岡山県出身。10代の頃より吹奏楽に親しみ、専門学校卒業後、楽器店勤務を経て独立。
2000年代より本格的に管楽器修理・販売・教育事業に携わり、現在は「株式会社服部管楽器」および関連スクールの代表として、多くの奏者とリペアマンを育成している。
自身の現場経験を活かし、リペア職人の社会的価値向上を目指して活動中。
noteに活動記録あり https://note.com/hattorikangakki
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