ネクストウィンズジャパン──眠っていた楽器が、未来の音楽を支えるまで


■はじめに

家の押し入れやクローゼットに、長いあいだ眠っている楽器はありませんか?
「昔吹いていたけれど、もう使わなくなってしまった」
「壊れてしまって、そのまま置いてある」

そんな楽器たちが、再び誰かの人生を支える“相棒”へと生まれ変わる場所。
それが 一般社団法人ネクストウィンズジャパン の取り組みです。

私たちは 吹奏楽を通じて教育と地域を支援する団体 として、
子供たちが「楽器がない」「環境がない」という理由で夢をあきらめないよう、
楽器レンタルとメディア発信を軸に活動しています。

今回は、そんな私たちの活動の裏側を、少しだけご紹介します。


■1. 送られてくる楽器たち——それぞれの物語と歴史

ネクストウィンズジャパンには、全国からさまざまな楽器が届きます。

・学生時代に吹奏楽部で使っていたトランペット
・娘さんが中学を卒業してから、そのまま眠っていたクラリネット
・長年吹いてきたけれど、もう身体の事情で演奏できなくなったサックス
・修理しようと思いつつ、いつの間にか時間が経ってしまったフルート

楽器一本一本に、持ち主の人生が刻まれています。
寄付してくださる方は、ほぼ必ずと言っていいほどこうおっしゃいます。

「また誰かに使ってもらえるなら嬉しいです」

その想いをしっかり受け取って、次につなぐことが私たちの役目です。


■2. 専門技術者による徹底メンテナンス

届いた楽器は、そのままレンタルに回されることはありません。
必ず 専門技術者が本格的なメンテナンスと調整 を行います。

▼ 修理・点検の主な流れ

  1. 分解・洗浄 — 内部まで徹底的にクリーニング
  2. 消耗パーツの交換 — タンポ・コルク・フェルトなどを品質の良いものへ
  3. 精密調整 — キィの高さや音のつながりを微調整
  4. 試奏チェック — 技術者自身の演奏で最終確認

一般の中古市場で同じレベルの修理をすると高額になることもあります。
しかし私たちの目的は「利益」ではなく “楽器の再活用を通じた教育支援”

だからこそ、修理費込みでもできる限り負担の少ないレンタル料金を実現しています。

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■3. 整備された楽器が、未来の奏者のもとへ

修理を終えた楽器は、用途に応じてさまざまな場所へ旅立っていきます。

  • 楽器を持てない子供たちの“最初の一本”として
  • 部活動で楽器が不足している学校の補助として
  • 大人の「もう一度音楽をやってみたい」を支える再スタート用として
  • 地域団体の音楽活動を支えるために

最近では、予算不足で十分な楽器が揃わない学校からの相談 が増えています。
新入生が多くても、学校の備品はすぐには増やせない。
そんな現場に、整備済みの楽器を迅速に届けることで、練習環境は大きく改善されます。

保護者や指導者の方からは、

「予算が確保できるまでの繋ぎとして本当に助かっています」
「まずはレンタルで始められるのが安心でした」

といった声が届いています。


■4. 楽器は“物”ではなく、受け継がれる文化

この活動を通じて感じるのは、
楽器は単なる物ではなく、人と文化をつなぐ存在だということ です。

誰かの青春を支えた楽器が、
次の誰かの夢への第一歩になる。

寄付者の想い、技術者の手しごと、演奏者のワクワクがひとつにつながり、
楽器の“第二の人生”がスタートします。

これは、リサイクルでもリユースでもありません。
文化の継承そのものです。


■5. 最後に──あなたの楽器が、誰かの未来をつくる

ネクストウィンズジャパンの活動は、寄付してくださる皆さま、楽器を大切に使ってくれる子供たち、指導者、地域の方々の協力によって成り立っています。

もし家に眠っている楽器があれば、ぜひ思い出してみてください。
その楽器は、まだまだ未来の音楽を支える力になれるかもしれません。

あなたの楽器が、誰かの夢を守る一本になる。
そんな未来を、一緒につくっていければ嬉しいです。




この記事の著者


管楽器リペアマン

服部 悟

服部 悟
岡山県出身。10代の頃より吹奏楽に親しみ、専門学校卒業後、楽器店勤務を経て独立。
2000年代より本格的に管楽器修理・販売・教育事業に携わり、現在は「株式会社服部管楽器」および関連スクールの代表として、多くの奏者とリペアマンを育成している。

自身の現場経験を活かし、リペア職人の社会的価値向上を目指して活動中。
noteに活動記録あり https://note.com/hattorikangakki

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