吹奏楽の歴史|起源は軍楽隊、行進曲から広がった音楽の世界【吹奏楽まめちしき】#9
柚葉先輩、なんで吹奏楽部って行進曲ばっかりやるんですか?



いい質問だな。実は吹奏楽の始まりは“軍楽隊”なんだ。



軍楽隊? それって兵隊さんの音楽ってことですか?



そうそう。歩調を合わせるリズムと士気高揚の旋律…つまり“戦場版BGM”ってわけだ!



先輩、言い方オタクすぎますよ…!
吹奏楽の起源は軍楽隊|行進曲から広がった音楽の世界
「吹奏楽部といえば行進曲!」というイメージを持っている人は多いのではないでしょうか。実際、吹奏楽部では運動会や式典、コンクールでも行進曲を演奏する機会が少なくありません。
なぜ吹奏楽と行進曲は切っても切り離せない関係にあるのでしょうか?
その答えは、吹奏楽のルーツにある 軍楽隊 にあります。
吹奏楽の始まりは軍隊から
吹奏楽の起源は、ヨーロッパの軍楽隊にさかのぼります。
まだ電子機器もスピーカーもなかった時代、戦場で遠くまで音を伝える手段は「楽器」でした。太鼓やラッパは、兵士たちに行進の合図や戦闘の開始を知らせるために欠かせない存在だったのです。
例えば、太鼓の「ドンドン」というリズムは歩調を合わせるのに最適で、ラッパの鋭い音は戦場の喧騒の中でもはっきりと聞こえました。つまり、軍楽隊は音楽隊であると同時に「通信手段」でもあったのです。


行進曲が生まれた理由
軍楽隊の役割は兵士の士気を高めることにもありました。規則正しいリズムと勇ましい旋律は、兵士たちの心を鼓舞し、戦場へ向かう緊張を和らげる効果があったといわれています。
そのため「行進曲(マーチ)」は、軍楽隊から自然に生まれた音楽の形式でした。一定のテンポと明快なリズムを持つ行進曲は、行進にも、士気を高める音楽としてもピッタリだったのです。
今日でも有名な「星条旗よ永遠なれ(Sousa)」や「ワシントン・ポスト」などは、当時の軍楽隊文化の象徴ともいえる作品です。
軍楽隊から市民へ、そして学校へ
19世紀になると、軍楽隊の文化は次第に市民社会へ広がっていきます。地域のお祭りや式典で演奏する市民バンドが生まれ、軍事目的を超えて「音楽を楽しむ」活動へと変化していきました。
日本では、明治時代に西洋音楽が導入された際、まず軍楽隊を通じて広まったといわれています。陸軍・海軍には専属の音楽隊があり、そこで使われた楽譜や楽器が教育現場にも取り入れられました。
これがやがて、現在の中学・高校の吹奏楽部へと発展していったのです。
吹奏楽の多彩なレパートリーへ
もちろん現代の吹奏楽は、行進曲だけではありません。クラシックの名曲を編曲した作品や、ジャズ、ポップス、映画音楽、さらには吹奏楽オリジナルのシンフォニック作品まで幅広く演奏されます。
とはいえ、行進曲はいまもなお吹奏楽の“顔”ともいえる存在です。運動会や式典で演奏されると自然と空気が引き締まり、誰もが歩調を合わせたくなる…これは軍楽隊から続くDNAといえるでしょう。


行進曲を演奏するときに感じたいこと
普段の部活で行進曲を練習するとき、つい「単純で簡単な曲」と思いがちかもしれません。
でも、行進曲には数百年にわたる歴史と役割が詰まっています。かつて兵士がその音に合わせて歩き、心を鼓舞していたことを想像すると、同じ曲でも違った響き方がしてくるはずです。
「どうしてこんなに規則正しいんだろう?」
「どうしてこんなに勇ましいんだろう?」
そう思ったときこそ、吹奏楽のルーツを感じるチャンスです。
まとめ
吹奏楽の起源は軍楽隊。そこから生まれた行進曲は、今も吹奏楽に欠かせない大切なジャンルです。
軍楽隊が果たした役割を知ることで、私たちが演奏する行進曲が単なる「曲」ではなく、歴史を背負った音楽であることに気づけます。
次に行進曲を演奏するときは、ぜひその背景を思い浮かべながら吹いてみてください。きっと、今までとは少し違った音楽の世界が広がるはずです。



なるほど~!行進曲って、ただの曲じゃなくて歴史が詰まってるんですね!



そうだな。ルーツを知ると、演奏する気持ちも変わるんだ。



じゃあ今度の練習で、歴史を意識して吹いてみます!



いい心がけだな。きっと音に深みが出るはずだぞ。
\吹奏楽のこと、ぜんぶここに /
吹奏楽の歴史年表
軍楽隊から始まった吹奏楽が、今の吹奏楽部につながるまでの流れを年表にまとめました。
| 年代 | 出来事 |
|---|---|
| 古代 | 太鼓やラッパが軍の合図や士気高揚に使われる |
| 14〜16世紀ごろ | オスマン帝国の軍楽隊「メフテル」が活躍。後のヨーロッパ音楽に影響を与える |
| 18世紀 | ヨーロッパ各国で軍楽隊が整備され、行進曲が発展する |
| 1810年代 | バルブ機構の発明で金管楽器が大きく進化する |
| 1846年 | アドルフ・サックスがサクソフォンを発明する |
| 1853年 | ペリー艦隊の軍楽隊が来日し、日本で洋楽の生演奏が披露される |
| 1869年 | 薩摩藩の伝習生が横浜でフェントンに学ぶ。日本の吹奏楽の始まり |
| 1940年 | 第1回全日本吹奏楽コンクールが開催される |
| 1956年 | 戦争による中断を経て全日本吹奏楽コンクールが再開される |
| 現在 | 学校の部活動から一般の楽団まで、日本は世界有数の吹奏楽大国に |
日本の吹奏楽の歴史
日本に吹奏楽がやってきたきっかけも、やはり軍楽隊でした。1853年、ペリー艦隊とともに来日した軍楽隊が、日本の人々の前で洋楽を演奏したと伝えられています。
本格的な始まりは1869年(明治2年)です。薩摩藩が30名あまりの藩士を「軍楽伝習生」として横浜に派遣し、イギリス陸軍の軍楽長ジョン・ウィリアム・フェントンの指導を受けました。これが日本初の吹奏楽団「薩摩バンド」で、伝習の場となった横浜の妙香寺には今も「日本吹奏楽発祥の地」の碑が立っています。フェントンは初代「君が代」の作曲者としても知られています。
その後、軍楽隊で育った音楽家たちが各地で演奏や指導を行い、洋楽は少しずつ市民へ広がっていきます。1940年には第1回全日本吹奏楽コンクールが開催されました。戦争による中断をはさんで1956年に再開されると、学校の部活動としての吹奏楽が全国に広がり、今では中学・高校の吹奏楽部から一般の楽団まで、日本は世界有数の吹奏楽大国になっています。
戦場の合図だった音楽が、海を越えて、いま放課後の音楽室で鳴っている。そう考えると、毎日の合奏もすこし特別に感じられませんか?
吹奏楽のルーツをさらにさかのぼりたい方は、世界最古のトランペットの話もどうぞ。


