なぜ吹奏楽部の「地域移行」が必要なのか|高岡敦史先生に聞く①【スイラボ#22】

「部活動の地域移行(地域展開)」——言葉は聞くけれど、なぜ必要で、何が起きているのかは意外と知られていません。スイラボ第22回は、岡山県の地域展開実証事業の委員長で、岡山大学准教授の高岡敦史先生をゲストにお迎えして、根本から学びます。シリーズ第1回のテーマは「そもそも、なぜ地域移行が必要なのか」。まずは動画でどうぞ。

服部
服部
今日はスペシャルゲスト。高岡敦史先生をお迎えしてます。
高岡先生
高岡先生
岡山大学の高岡です。よろしくお願いします。
服部
服部
岡山県の地域展開実証事業の委員長。岡山で一番、地域移行に詳しい方です。
金ちゃん
金ちゃん
めちゃくちゃ緊張します…。

①そもそも、なぜ「地域移行」が必要なのか

部活動の地域移行は、なぜ進められているのでしょうか。高岡先生がまず挙げたのは、少子化による「部活動の持続可能性」の危機でした。

スナミート
スナミート
根本的に、なんで地域移行をしないといけないんですか?
高岡先生
高岡先生
子どもが多かった時代は、どの中学校にも吹奏楽部がありました。でも今は人数が減って、編成が小規模になったり、そもそも部活が作れない学校が増えている。
金ちゃん
金ちゃん
野球部が9人揃わない、みたいなことですね。
高岡先生
高岡先生
複数の学校で合同部活、という手も打ってきたけど、それももう限界。生まれ育った場所で、選べる活動が限られてしまうのは、ハッピーじゃないですよね。
スイラボ第22回 高岡先生に学ぶ地域移行
ゲストは岡山県の地域展開の第一人者・高岡敦史先生。根本から教えていただきました。

少子化で子どもが減ると、これまでの形で部活を維持するのが難しくなります。人数が足りずチームが組めない、合同部活にも限界がある——どこで生まれ育っても好きな活動を選べる環境を、どう守るか。それが地域移行の出発点です。

②もう一つの「持続可能性」問題|先生の異動

高岡先生
高岡先生
それともう一つ。学校の先生には、異動があるんです。
服部
服部
吹奏楽を熱心に指導していた先生が、異動してしまうと…。
高岡先生
高岡先生
次に同じレベルの指導者が来る保証はない。楽器を吹いたことのない先生が顧問になることもある。部活はもともと、そういう持続可能性の問題を抱えていたんです。
スイラボ第22回 持続可能性を語る
少子化だけでなく、指導者の異動も大きな課題。部活の持続可能性は前から揺らいでいました。

吹奏楽部の質は、指導できる先生の存在に大きく左右されます。ところが先生には異動があり、熱心な指導者がいなくなれば、後任が同じように指導できるとは限りません。在学中の3年間しか見えていないと気づきにくいですが、部活動は以前から「指導者が続かない」という構造的な弱さを抱えていたのです。

③「先生の働き方改革が原因」は誤解?

地域移行は「教員の働き方改革のため」と語られがちですが、高岡先生はその受け止め方を、ていねいに解きほぐします。

金ちゃん
金ちゃん
よく「先生の働き方改革のためでしょ」って言われますけど。
高岡先生
高岡先生
地域移行を進めるタイミングと、日本の先生が過労レベルで働きすぎ、という国際調査の結果が出たタイミングが、たまたま重なったんです。だから「そのためだろう」と強く受け止められてしまった。
高岡先生
高岡先生
もちろん働き方改革も大事。でも、それだけが目的じゃない。持続可能性の問題を解決して、もっと豊かな環境を作るのが本質です。
服部
服部
「部活を残すか、地域移行か」の二択じゃない、と。
高岡先生
高岡先生
そう。部活を残す、という選択肢は、もうないんです。
スイラボ第22回 働き方改革の誤解を解く
「働き方改革のためだけ」という誤解を、第一人者がていねいに解きほぐします。

先生方が部活指導で長時間労働になっていたのは事実で、働き方改革は重要なテーマです。ただ、地域移行はそのためだけに行うものではありません。少子化と指導者不足という「持続可能性」の問題を解決し、子どもたちの活動環境をよりよくする——それが本来の目的だと、高岡先生は強調します。「部活を残すか、地域移行か」ではなく、すでに従来の部活を続けること自体が難しくなっている、という現実が出発点なのです。

まとめ|地域移行は、未来の環境づくり

少子化と、指導者の異動。この二つの「持続可能性」の問題が、地域移行の根っこにあります。どこで生まれ育っても、好きなスポーツや文化活動を続けられる環境をつくる——それが地域移行の目指すところです。次回は、その実現に立ちはだかる具体的な課題に踏み込みます。

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